Ray/レイ〜失明しても母親の言葉を心に刻んで忘れなかったレイ・チャールズ

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ソウル・ミュージックの顔役として、サム・クック、ジェームス・ブラウン、ジャッキー・ウィルソン、アレサ・フランクリンらと並び、長年に渡って偉大な功績を残したレイ・チャールズ。そんな彼の半生を綴った映画に『Ray/レイ』(Ray/2004)がある。

私が小さい頃に体験した試練や苦しみ、長年に渡って起きたあらゆる事柄を人々に分かってほしい。自分がどこへ行きたいかを知っていて、諦めずに頑張れば、逆境から立ち直れることを人々に知ってほしい。何度かノックダウンされたからと言って、諦めてはいけない。

監督のテイラー・ハックフォードは、1980年代後半にストーリーを書き上げていたが、映画化までに15年もの歳月を要することになった。レイは常に製作過程において、自分の影の部分を避けないようにとテイラーに言った。

君はどんな話を伝えてもいいし、私をどのように見せても構わない。でも、真実を語らない事だけは許されない。それは正しい事ではないからね。

問題は誰がレイを演じるかだった。テイラーはある日、レイのもとにジェイミー・フォックスを連れて行き引き合わせることにした。ジェイミーは3歳でピアノを始め、その奨学金で大学に進んだ経歴の持ち主だった。
二人はピアノの前に座って一緒に弾き始めた。ジェイミーはファンクとゴスペルっぽいものを。レイはセロニアス・モンクのジャズを弾いた。レイについてこれらないジェイミーに、「さあ、来い。どうした? 君の指の下にあるものじゃないか」と厳しく言った。
レイは音楽に関しては完璧を求める人だったので、私が起用を諦めかけた時、ジェイミーがやっと弾けるようになり、レイが言った。「そうだ、この子はできるじゃないか。彼に決まりだ」と。レイ本人が彼に役を与えたんだ。

ジェイミーはそれからというものの、レイ・チャールズを演じるために、仕草や喋り方など肉体的な特徴から真似ることを始めた。点字のレッスンも受けた。しかし、鍵はニュアンスだった。単に真似るのではなく、精神的なものを捉えたかった。
撮影の時、目に特殊メイクがされていたから1日14時間、何も見えなかった。暗闇の世界は慣れるまで大変だ。まるで冷たいプールに飛び込むみたいな感触だ。だけど一旦慣れると、音楽が強烈が身体に響くようになったんだ。
「貧乏も黒人も盲目も嫌だ。だから自分を支配して自分の人生を作り直すんだ」とレイは言った。彼の決意は明確だった。レイにはある種のエネルギーやカリスマ性が備わっていて、そのおかげで人々が彼に誠実に接したのだと分かった。

ジェイミーはレイの中に完璧に入り込み、素晴らしい演技を見せた。そしてアカデミー主演男優賞を受賞。
映画は1940年代後半、クラブでの演奏やツアー廻りでプロのミュージシャンとして活動を開始するレイのキャリア初期から、アトランティック・レコードと契約して伝説的なヒットを飛ばし、ABCパラマウントでの60年代の栄光と苦悩、79年にジョージア州議会がレイの名誉を回復して「Georgia on My Mind」を州歌に認定する日までを描く。「I Got a Woman」「What’d I say」「I Can’t Stop Loving You」といった代表曲ももちろん収録されている。
南部での母子家庭の貧困、少年時代に起こる弟の死とトラウマ、そして運命の失明。あるいは人種差別、麻薬中毒、女性問題、音楽ビジネスなど、あらゆる真実を我々は知ることになる。そんな中で挿入される母親との回想エピソードが感動的だ。レイは何か辛いことがあると、いつも死別した母親の言葉を想い出した。心に刻んで忘れなかった。

盲目だからといって人からお情けをもらうのではなく、どんな時も二本の足で立てる人間になりなさい。

レイ・チャールズは2004年6月10日に73歳で亡くなった。同年8月には、おそらく最後になること予感しながら録音した遺作『Genius Loves Company』(ノラ・ジョーンズ、ボニー・レイット、ウィリー・ネルソン、ヴァン・モリソン、エルトン・ジョン、B.B.キングら12人とのデュエット)がリリースされて大ヒット。映画『Ray/レイ』は10月に公開された。(中野充浩)
予告編


こちらはレイ・チャールズ本人による「「Georgia on My Mind」

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『Ray/レイ』

*日本公開時チラシ
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*参考・引用/『Ray/レイ』パンフレット
*このコラムは2016年6月8日に公開されました。
評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
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