ダイナー〜選曲が心地いいミッキー・ローク出演の1959年の青春グラフィティ
これまで本コーナー「TAP the SCENE」ではたくさんの青春映画を取り上げてきた。子供の頃に親に連れられて観たファンタジーアニメや家族向け映画とは違い、低予算でリアルな青春映画は初めて自分の小遣いで映画館に出向いた“体験”であり、スクリーンに映っているのは等身大の“人生”でもあった。
大人になってもこのジャンルに思い入れがある人は少なくない。なぜなら、人には多感な時期(15〜24歳くらい)で接したカルチャー(映画や音楽や小説など)の影響が、他の時期に比べて強く残るからだ。それに思春期の中高生の“入口”としての青春映画には名作が多かった。
青春映画を見なおしてきた中でふと思ったことがある。それは、このジャンルは「時」と「場所」がとても重要な役割を果たしているということ。逆に言えば、それらを特定せずに秀逸な物語は描けないのだ。それは1950年代なのか、70年代なのか、それとも90年代なのか。それは西海岸なのか、東海岸なのか、それとも名もなきスモールタウンなのか。「時」と「場所」の設定で、すでにドラマは静かに始まっている。
50〜80年代のスモールタウンや田舎町が舞台の『ラストショー』『アウトサイダー』『フットルース』。60〜80年代の西海岸が舞台の『ビッグ・ウェンズデー』『ロード・オブ・ドッグタウン』『レス・ザン・ゼロ』。60年代のNYを舞台にした『ワンダラーズ』や『プリティ・イン・ピンク』などジョン・ヒューズによる80年代学園作品も忘れられない。
90年代のアメリカには『リアリティ・バイツ』、イギリスには『トレインスポッティング』という傑作があった。また、映画作りという観点では、リアルタイムで製作されたものと、監督や脚本家などの追憶で後年になって成立している2種類があり、とにかく話は尽きない。
今回、新たにリストに加えるのは『ダイナー』(Diner)。1982年の公開だが、物語は設定は1959年のボルティモア。監督・脚本のバリー・レビンソンの個人的体験が映画になった。80年代にやたらと50〜60年代が舞台の青春映画が多いのは、作り手の青春期がその時代にあたるから。今や大スターの若かりし頃の姿が見れたりして、ちょっとした発見もあるのも特徴。『ダイナー』にはミッキー・ロークやケヴィン・ベーコンやエレン・バーキンが出演している。
『ダイナー』は複数の登場人物の物語が同..