筒美京平の評価を決定づけた平山みきの「真夏の出来事」

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どこか”変な歌”についての定義づけをしたのは、『時間ですよ』や『寺内貫太郎一家』、『ムー一族』などの人気シリーズを筆頭に、テレビ史に残る数多くのテレビドラマを手がけたTBSの演出家、後に作家としても活躍した久世光彦だった。<注1>

流行歌の世界では、ときどき変な歌が突然現れてヒットすることがある。
《変な》というのは、言いなおせば《変に新しい》――つまり、いままであまり聴いたことのない曲想と、これまたユニークな歌い方の歌手と――二つが揃った歌のことで、私にいま、そのベスト・スリーを挙げろと言われたら、年代順に①月がとっても青いから(菅原都々子)②愛のさざなみ(島倉千代子)③真夏の出来事(平山三紀)ということになる。


1971年に発表された平山三紀の「真夏の出来事」は、作詞が橋本淳で作・編曲が筒美京平という、当時は最も勢いがあるソングライター・コンビによる作品だった。
そして久世が言うところの”変な歌”を構成する、ふたつの要素を完全に満たしていた。
エレキベースが同じリフをイントロから最後まで弾き続ける上に、分離した左右のチャンネルから、リズムをキープするパーカッションとアコースティック・ギター、アクセントを効かせたハイハットとドラムが鳴っている。
そこから生まれるファンキーなグルーヴ感は、ヒントを得たと言われるモータウンの原曲よりもずっと強力で、華やかなサウンドだった。
はっぴいえんどが日本語のロックに挑んでいた当時の音楽シーンにあって、これはまぎれもなく新しい音楽であった。
「カ~レの ク・ル・マ~に乗ッて」と鼻にかかった独特の乾いた声で突き放すように歌う平山みき(当時は平山三紀名義)は、久世の言った「ユニークな歌い方の歌手」そのものだった。
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ヴォーカルを際立たせるホーンセクションとストリングスもまた、アメリカの最先端のブラック・ミュージックに引けをとらない、筒美京平ならではの斬新なアレンジで洋楽好きな若者にも支持された。
ライブハウス『銀座メイツ』で歌っていた平山みきは、ユニークな声が認められてヒットメーカーだった二人に預けられ、1970年に「ビューティフル・ヨコハマ」でデビューしている。
デビュー後も筒美京平の秘蔵っ子として、いかに大事に育てられたかについて、作詞家のの橋本淳は謙遜しつつもこう語ったことがある。

僕は京平さんと何曲ぐらい曲作ってんのか分かんないんだけど、いい曲は全部みきちゃんに作ってるんです。
だからいい曲が出来ると、みきちゃん用に残しておくんです。
本当にすごい曲ばっかり並んでると思う、音楽的には。
詞はすごくボロいんですけど(笑)。


1960年代後半に登場して歌謡曲の黄金時代を牽引し、その後もアイドル歌謡曲やJ-POPへと音楽シーンが変遷していくなかで、コンスタントにヒット曲を生み出し続けた筒美京平は日本最大のヒットメーカーと呼ばれる。
多くの関係者が当時の筒美京平について、常に新しい音楽を誰よりも早く吸収していたと証言しているが、本人は「新しい音楽」をつくることよりも、「売れる音楽」をつくることに注力していたという。
だからこそ筒美京平・橋本淳のコンビは引き受けた歌手やアイドルの長所を見抜いて、その魅力を最大限に引き出す楽曲を作り、驚くほどの割合でヒット曲を量産することが出来たのだろう。
にも関わらず、その中から時代を超えていくつもの歌がスタンダードになったのは、メロディーメーカーとしての本来的な資質の高さと、意味ではなくイメージに重きをおいた普遍的な歌詞によるものだった。
実験的な曲や野心的な曲を次々に提供するソングライターの期待に応えて、平山みきは今もステージはもちろんだが、CMや執筆の分野でも活躍している。

私が今も歌っていられるのは、そういうところにあるのかもしれないです。
お二人の歌は今歌っても、全然古い感じがしないから。
そのままを見てもらえるので、すごいなあと思います(平山みき)





(本コラムは2014年8月29日に公開されました)
<注1>久世光彦の文章の引用元は、久世光彦著「みんな夢の中~続マイ・ラスト・ソング」文春文庫刊。なお久世光彦が手がけた『時間ですよ』や『寺内貫太郎一家』、『ムー』、『ムー一族』などの人気ドラマ・シリーズの中からは、天地真理の「みずいろの恋」、堺正章の「街の灯り」、浅田美代子の「赤い風船」、郷ひろみ・樹木希林の「お化けのロック」や「林檎殺人事件」といったヒット曲が誕生した。
<注2>橋本淳と平山三紀の発言は、いずれも「音故知心#3 ゲスト:橋本淳 平山みき」@阿佐ヶ谷ロフトA (2012.4.23)の筆者との対話からの引用。
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『ビヨンド~平山みき オール・タイム・ベスト』

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