遠藤賢司の名曲カレーライス〜日常の中に描かれた三島由紀夫の切腹自殺

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君も猫も僕も
みんな好きだよ カレーライスが
君はトントン じゃがいもにんじん切って
涙を浮かべて たまねぎを切って
バカだな バカだな ついでに自分の手も切って
僕は座ってギターを弾いてるよ
カレーライス


これは伝説の純音楽家“エンケン”こと遠藤賢司が1972年に発表した楽曲だ。
70年代、日本においてのフォークソングはいわゆる“四畳半フォーク”と呼ばれるものが主流だった。
60年代から70年代にかけてアメリカでウッディ・ガスリーやピート・シーガー、そしてボブ・ディラン、ジョーン・バエズ等が歌った“プロテストソング”に影響を受けた日本のフォークシンガー達もいたのだが…時代と共に歌も変化してゆく。
彼らは身の回りの限られた空間、社会、恋愛、人間関係への思いを歌に込め、私小説的な色合いが濃い歌を唄うようになる。
そんな変遷の中で、このエンケンの「カレーライス」は精彩を放ちながらヒットした曲だった。
エンケンと言えば吉田拓郎と並んで“フォーク界のプリンス”と呼ばれることもあるほど有望な存在だったという。
それは当時フォーライフレコードを立ち上げてゆく、拓郎や泉谷しげる、小室等、井上陽水等が持っていた才能とは別の次元にある“異質な個性”だった。
当時、エンケンをポリドールレコードにスカウトしたディレクター、金子章平はこんな風に語る。
「僕が学生時代に六本木の自由劇場で初めて彼のステージを観たんですが、びっくりしたというか…とにかく“感じる歌”でした。とにかくそれまでに聴いたことのないような歌でした。だから自分で担当したいと思ったんです。」
当時、ポリドールにはフォークの土壌がまったくなく…どんな歌手でもアルバムの初回プレスが5,000枚だったところ、エンケンは2,000枚だったという。
営業担当だった田中裕は当時のことをこう述懐する。
「何が困ったかというと…曲を取り上げてくれるメディアがなかったことです。唯一ラジオの深夜放送がかけてくれるくらいかぁ。そんな逆境の中でシングルカットしたこの曲は10万枚も売れたんです!彼がコンサートで地道に歌って事前プロモーションができていたことと…やはり歌詞で三島由紀夫の割腹自殺のことをさりげなく歌っていたことへの話題性もあったのでしょう。」

僕は寝転んでテレビを見てる
誰かがお腹を切っちゃったって
うーん とっても痛いだろうにねえ



1970年11月25日、三島由紀夫は楯の会のメンバー4名と共に東京市ヶ谷にあった陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地を訪問。
突如、総監・益田兼利陸将を監禁するとバルコニー上から800人の隊員達を前に演説を始めた。

おまえら聞けぇ、聞けぇ!静かにせい、静かにせい!話を聞けっ!
男一匹が、命をかけて諸君に訴えてるんだぞ!いいか!いいか!
それがだ!いま日本人がだ!ここでもってたちあがらなければ、自衛隊が立ち上がらなきゃ憲法改正ってものはないんだよ!
諸君は永久にだねぇ!ただアメリカの軍隊になってしまうんだぞ!
<中略>
諸君は武士だろう!諸君は武士だろう!
武士ならば自分を否定する憲法をどうして守るんだ。
どうして自分の否定する憲法のため、自分らを否定する憲法というものにペコペコするんだ。
これがある限り、諸君てものは永久に救われんのだぞ。
諸君は永久にだね、今の憲法は政治的謀略に、諸君が合憲だかのごとく装っているが、自衛隊は違憲なんだよ!
自衛隊は違憲なんだ!
憲法というものは、ついに自衛隊というものは、憲法を守る軍隊になったのだということに、どうして気がつかんのだ!
俺は諸君がそれを断つ日を待ちに待ってたんだ!
<中略>
それでも武士かぁ!それでも武士かぁ!
まだ諸君は憲法改正のために立ちあがらないと見極めがついた。
これで俺の自衛隊に対する夢はなくなったんだ。
それではここで俺は天皇陛下万歳を叫ぶ!
天皇陛下万歳! 天皇陛下万歳! 天皇陛下万歳!


三島はマイクを使わずに演説をしたため、演説の大半は頭上を飛び交うヘリコプターの騒音にかき消されてしまって聞き取る事は出来なかったらしい。
しかも、なんとか聞き取れた三島の言葉に対して自衛隊員達は野次を飛ばしてからかい反発した。
三島は戦力放棄を謳った憲法を否定し、自衛隊に対して「共に起ち、義のために死のう」と呼びかけたが…自衛隊員の誰一人として三島のもとに駆け寄ろうとはしなかった…。
当初30分予定されていた三島氏の演説は7分間で終了となった。
12時10分頃。
バルコニーから総監室に戻った三島は、誰に言うともなく「20分くらい話したんだな、あれでは聞こえなかったな」とつぶやいたという。
そして益田総監の前に立ち「総監には、恨みはありません。自衛隊を天皇にお返しするためです。こうするより仕方なかったのです。」と話しかけ、制服のボタンを外した。
総監から約3メートル離れた赤絨毯の上で上半身裸になった三島は、バルコニーに向かうように正座して短刀を両手に持ち両手で左脇腹に短刀を突き立て、右へ真一文字作法で切腹した。



<引用元・参考文献『フォーク名曲事典300曲』/富澤一誠(ヤマハミュージックメディア)>
※トップ画像はオフィシャルサイトのディスコグラフィー『45年目の満足できるかな』(2016)のジャケットを使用させていただきました
【メイキング•オブ•遠藤賢司 Episode 1】
2012年2月18日に名古屋のライブハウス「得三」で行われたライブの舞台裏をドキュメントした貴重な映像。


【メイキング•オブ•遠藤賢司 Episode 2】
2014年11月16日に東京・草月ホールで開催されたデビュー45周年記念リサイタルのハイライトとバックステージを収録したミニドキュメンタリー。


<遠藤賢司 オフィシャルサイト>
http://enken.com/wp/
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