Che sarà・前編〜イタリア移民の不安と希望を哀愁のメロディーに乗せて

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この歌は、イタリアの北西部リグリーア州インペリア県にある小さな町で毎年開催されているサンレモ音楽祭で1971年に準優勝を受賞したポップナンバーで、いわゆるカンツォーネ(イタリア民謡)をベースに紡がれた楽曲だ。
タイトルの「Che sarà(ケ・サラ)」という言葉は、日本語に訳すと“どうなってしまうんだろう?”という意味を持つという。
この音楽祭の採点システムは、イタリアのシンガーと国外のアーティストが一組になり、あらかじめエントリーされた同一曲を歌うという変則的なものだった。
毎年入賞した曲は世界中でヒットする傾向にあり、若手アーティストにとってはスターに駆け上がる登竜門的なコンテストでもあった。
今回スポットをあてるこの歌は、イタリアを代表する男女混合の4人組コーラスグループ、リッキ・エ・ポーヴェリ、そしてプエルトリコ出身の盲目の天才ギタリスト/歌手、ホセ・フェリシアーノの二組によって歌唱されて入賞に至った。




これからどうなってしまうんだろう 
僕の人生がどうなるのか誰もわからない
何だってできるのか?何もなしえないのか?
明日、僕はそれを知るだろう
なるようにしかならないものさ


サンレモといえば隣国フランスのニースやモナコに隣接し、平らな土地は少なく、ちょっとした高台や丘からは海がよく見える港町だ。
この町は、第二次世界大戦後にイタリアの戦後復興を目指し、観光客を招致して外貨を稼ぐ目的でカジノが作られ、1951年から音楽祭が開催されるようになった。
実はイタリア全土へのラジオとテレビの放送は、この音楽祭の歴史と共にあるという。これまでコニー・フランシスやポール・アンカ、そしてあのイギリスの伝説的なロックバンド、ヤードバーズまでが出場し、日本からも伊東ゆかりや岸洋子が参加したという記録が残っている。
ちなみにヤードバーズの出演は、エリック・クラプトン脱退後の1966年の回で、新しく加入したジェフ・ベックはこのサンレモ音楽祭への出場に不満を持ち、ステージにはかろうじて立ったものの、あらかじめ行われる課題曲「Questa Volta」のレコーディング当日に雲隠れする事件を起こしたというエピソードが残っている。
1960年代には世界的に“カンツォーネブーム”がおこり、サンレモ音楽祭は最盛期を迎えたのだが…70年代を迎える少し前あたりからイタリア経済が衰退しはじめ、規模の縮小を余儀なくされる。
ちょうどそんな最盛から衰退への間(はざま)で生まれたのがこの「Che sarà(ケ・サラ)」である。
作曲は、ジミー・フォンタナとカルロ・ペスとニコラ・グレコ・イターロの共作とされている。
そして作詞はフランコ・ミリアッチというイタリアの作詞家・音楽家の手によるもの。
ミリアッチが綴った原詞では、イタリアの小さな町の貧しさと、そこから出て行こうとする若者の心情が描かれている。
さかのぼること約100年…1870〜1880年代。
イタリアは北部と南部で国民の生活レベルが大きく異なり、教育もあまり受けていない多くの南イタリア人(特に農民たち)がアメリカのニューヨークに移り住んだという歴史がある。
ミリアッチは、そんな移民達の過去と、60年代末に衰退しようとしていたイタリア経済を重ね合わせながら、この歌を綴ったのだろう。

友達もほとんど出て行ってしまった
残りのみんなも僕の後に続くだろう
やり切れないよ…だってとても良い仲間だったんだから
すべては過ぎ去り…ぜんぶ消えてしまうんだ


歌の主人公(青年)の胸中によぎる、先の見えない不安とやりきれない気持ち。
自分たちの暮らしている国で目の当りにする経済格差。
生きるために故郷をあとにし、恋人とも別れ…新しい仕事を求めて旅立たなければならない悲しい現実。
哀切、郷愁、守りたいもの…そしてわずかな希望。
時代背景も言語もちがう異国の歌が、我々の心に何かを訴えかけてくるような気がする。
歌というものには本来、そういう力があるのかもしれない。

ホセ・フェリシアーノ『Free Soul: The Classic of Jose Feliciano』

ホセ・フェリシアーノ『Free Soul: The Classic of Jose Feliciano』

(2010/ソニーミュージックジャパン)

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