スケアクロウ〜どうしようもないカッコ悪さに胸を打たれるロードムービーの名作

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TAP the SCENEでは、これまで様々な時代における数々のロードムービーを取り上げてきた。そこには幾つかのパターンがあることに気づく。ここで少しまとめておこう(各ジャンル・年代順)。どれも絶対必見の名作揃いだ。
①男の一人旅
パリ、テキサス
エリザベスタウン
イントゥ・ザ・ワイルド
LIFE!
②男たちのロードムービー
イージー・ライダー
真夜中のカーボーイ
断絶
さすらい
ストレンジャー・ザン・パラダイス
クロスロード
マイ・プライベート・アイダホ
デッドマン
モーターサイクル・ダイアリーズ
オン・ザ・ロード
グリーンブック
③女のロードムービー
アリスの恋
テルマ&ルイーズ
マイ・ブルーベリー・ナイツ
④親子もどきのロードムービー
ペーパー・ムーン
都会のアリス
⑤仲間たちのロードムービー
アリスのレストラン
さらば冬のかもめ
カリフォルニア・ドールズ
ブルース・ブラザース
ファンダンゴ
ダウン・バイ・ロー
スタンド・バイ・ミー
オー・ブラザー!
ザ・ビーチ
ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ
あの頃ペニー・レインと
⑥恋人たち、もしくは男の逃避行
夜の人々
気狂いピエロ
明日に向かって撃て!
バニシング・ポイント
ビリー・ザ・キッド/21才の生涯
ゲッタウェイ
天国の日々
ワイルド・アット・ハート
⑦男と女のロードムービー
ファイブ・イージー・ピーセス
シェルタリング・スカイ
⑧ファンタジー
オズの魔法使
ペイネ 愛の世界旅行
今回紹介する『スケアクロウ』(Scarecrow/1973)は、上のリストでいうところの②に加えられるロードムービー。カンヌ国際映画祭においてパルム・ドールを獲得した“悲しくて美しい”人生を描いた名作。
主演する二人は、ジーン・ハックマンとアル・パチーノ。当時『フレンチ・コネクション』や『ゴッドファーザー』で注目されていた二人の演技派の共演が話題になった。撮影はスタッフ、キャスト、機材が大型車両と共に移動するシネ・モービル方式。早朝5時に撮影に出発し、帰りは真夜中なんて当たり前。ゆえにフィルムに刻まれたリアリティがハンパない。

この映画は無垢を描いた物語だ。主人公の二人は反徒ではなく、多くの人々同様、ささやかな希望を抱いて生きている。彼らは社会に挑戦しようとしない敗残者であり、犠牲者だ。


監督のジェリー・シャッツバーグが言うように、この作品に出てくる二人の男は決してクールな生き方をしていない。タイトルの「スケアクロウ=案山子」が意味するように、見掛け倒しの頑固者で、夢を掴もうと懸命に努力はするものの、結局は無駄骨に終わってしまうアンラッキーな男たちだ。
しかし、そのどうしようもないカッコ悪さ。かすかな希望に人生のすべてを賭けてしまうような愚かさが、どこまでも胸を打つ。南カリフォニアからデトロイトまでの3200キロ。喧嘩っ早い大柄の荒れくれ者と優しい性格の小柄なおどけ者という対照的な人間が、旅を通じて育む友情、心の触れ合いは、2010年代のデジタル社会に生きる我々にとって、むしろ「強さ・優しさ・逞しさ」を備えた人間的魅力を感じる。
マックス(ジーン・ハックマン)とライオン(アル・パチーノ)が出逢うのは、南カリフォルニアの路上。二人の会話から、マックスは6年の刑期を終えたばかりで、洗車の事業を始めるためにピッツバーグに行くこと。ライオンは船員生活から足を洗って、5年前に置き去りにした妻子に会うためにデトロイトへ行くことが分かる。
「案山子はカラスにまで馬鹿にされているが、それでも自分を頼りにそこに立ててくれた人のために、じっとその領域を守ろうと頑張っている。だからカラスも同情してそこには入らない」。立ち寄ったダイナーでライオンがそう話すと、マックスは笑いながら呆れるが、「人を信じ、物事を荒立てず、人を笑わせてうまくやっていく」というライオンの生き方にどこか魅了される。マックスは信頼できる事業パートナーとしてライオンを指名した。
ヒッチハイクや汽車を乗り継いでデンバーにやって来た二人。そこにはマックスの妹コリーがいて、その友人のフレンチーにマックスは惚れ込む。意気投合した4人は盛大なパーティに繰り出して、アレサ・フランクリンの音楽で踊り明かす。しかし、フレンチーの異性関係が原因でマックスはその場にいた男と乱闘。ライオンとともに更生施設で一ヶ月の強制労働を課せられる。短気なマックスは逆戻りの生活に耐えられず、ライオンに責任のすべて押し付けて、一方的に友情を絶とうとする。
施設の古顔であるライリーは馴れ馴れしい態度でライオンに近づき、彼には楽を仕事を、反抗的なマックスには豚の世話係を回す。ライリーの本当の目的は自分の性欲処理のためにライオンを利用しようとしただけで、それを拒んだライオンは袋叩きにされて血まみれになる。怒りを覚えたマックスはライリーに復讐し、二人の間に友情が復活する。
デトロイトに向かう二人だが、酒場でまたもやトラブルを引き起こそうとするマックスに初めてライオンは怒る。友情を失いたくないマックスは即興のストリップを披露して、その場を和やかに収めた。ようやくライオンが示すスケアクロウの生き方が分かってきたのだ。
5年ぶりに辿り着いた妻の家の前で、まずは電話を掛けて様子を伺う小心者のライオン。期待や不安、後悔や自責の念など、彼の心の中にはあらゆる感情が募っていた。だが妻はまさかのライオンからの電話に罵声を浴びせる。しかも子供は元気で一緒にいるのに、出産直前に階段で転んで死産したなどと嘘をつき、さすらうことを選んだライオンを責め立てる。
ショックで放心状態になるライオン。心配するマックスの前では、元気な男の子がいたこと。妻は再婚したので新しい生活を邪魔するわけにはいかないなど、作り話でごまかす。二人の行き先はもうピッツバーグしか残されていなかった。マックスが相棒の異変と真実に気付いた時、ライオンは精神を壊して病院に運び込まれる。マックスは必死に稼いで貯め込んだ事業用の金を親友の治療費に使うことを決める。そして一人、ピッツバーグに旅立っていく……。(中野充浩)
予告編



『スケアクロウ』

『スケアクロウ』

*日本公開時チラシ


*参考・引用/『スケアクロウ』パンフレット、『70年代アメリカ映画100』(芸術新聞社)
*このコラムは2018年9月に公開されました。
評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
名作映画の“あの場面”で流れる“あの曲”を発掘する『TAP the SCENE』のバックナンバーはこちらから
【執筆者の紹介】
■中野充浩のプロフィール
http://www.tapthepop.net/author/nakano
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