カンザス・シティ〜レスター・ヤングやチャーリー・パーカーが呼吸したジャズの街

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映画『カンザス・シティ』(Kansas City/1996)は、同地を故郷とするロバート・アルトマンが監督し、少年時代に聴いていたジャズへの愛が溢れた作品。と言っても自伝的要素はなく、あくまでも独自のストーリーに徹底する。
1970年代の『M★A★S★H』『ロング・グッドバイ』『ボウイ&キーチ』『ナッシュビル』といったアルトマン作品にファンは多い。だが『ザ・プレイヤー』『ショート・カッツ』『プレタポルテ』と続く1990年代も、まぎれもなく同監督のキャリアのハイライト。本作もそんな時期に撮られた傑作だ。
物語の舞台となるのは1930年代前半のアメリカ中西部ミズーリ州、カンザスシティ。アメリカ中が大恐慌に覆われる中、この地だけは活気があった。民主党の悪徳政治のドン、トム・ペンダーガストによって街やビジネスが牛耳られる代わりに、ギャング仕切りのナイトスポットが続々開店し、至る所からジャズが響いていたのだ。
もちろん仕事を求めて腕のあるジャズ・ミュージシャンたちが集まって切磋琢磨する。こうして素朴なニューオーリンズ・スタイルとも、洗練されたニューヨーク・スタイルとも違う、リフ中心に強烈なスウィング感覚を持つビッグバンド・サウンド=カンザス・シティ・ジャズが確立していく。
その中にはベニー・モーテン楽団を引き継ぐことになるカウント・ベイシーやサックス吹きのレスター・ヤングがいた。ヤングはコールマン・ホーキンス、ベン・ウェブスターと並ぶモダンテナーの創始者であり、カンザス・シティで生まれ育ったチャーリー・パーカーの少年時代の憧れでもあった。
映画はそんなジャズが鳴り響き、選挙を前日に控えた1934年のカンザス・シティの二日間を描く。
選挙は不正が行われることは前提で、街には暴力的なムードで漂っている。そんなある日、一人の若い女ブロンディのチンピラ夫が黒人組織の金を略奪。あえなく捕まってギャングのボス(この役にはハリー・ベラフォンテがキャスティング)に監禁される。そこでブロンディは愛する夫を取り戻す材料にするため、大統領の側近の妻キャロリンを誘拐する。
しかし、キャロリンの結婚生活からはすでに愛が消えており、退廃的な生活の中でアヘン中毒者になっている。経済格差のある二人が行動を共にしていくうち、奇妙な友情のようなものが芽生える。
貧しくても「愛とは相手が自分の中にいるような気持ち。まるで息をするみたいに」と言うブロンディ。一方、裕福でもその感覚を持ち合わせていないキャロリン。ブロンディの夫が瀕死の状態で戻ってきた時、キャロリンは遂にある行動に出る……。
『カンザス・シティ』の見どころは、何と言っても演奏シーン。21人のジャズ・ミュージシャンたちが出演して、当時の熱気を再現してくれる。ジョシュア・レッドマンがレスター・ヤング、クレイグ・ハンディがコールマン・ホーキンスに扮し、サックスバトルを披露するシーンはこの映画の真髄。
そしてエンドロール。喧騒から解放されて何もかも終わった時、ロン・カーターとクリスチャン・マクブライドのベース・デュオが、デューク・エリントンの「ソリチュード」を奏でる静寂。
ちなみにトム・ペンダーガストは1939年に脱税を告発されて有罪となり、連邦刑務所送りになった。
予告編





『カンザス・シティ』のDVDは現在廃盤の模様。
*日本公開時チラシ


*参考・引用/『カンザス・シティ』パンフレット
*このコラムは2019年6月に公開されました。
評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
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