アーバン・カウボーイ〜都市開発で失われつつある男たちの“汗の精神”を描いたヒット作

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カントリー歌手として鳴かず飛ばずだったミッキー・ギリーに転機が訪れたのは1971年。テキサス州ヒューストンのビジネスマン、シャーウッド・クライヤーと意気投合し、ホンキートンク・クラブの共同オーナーになったのだ。 
ヒューストンから車で30分。パサデナという町のハイウェイ沿いにオープンしたこの酒場はフットボール場がまるごと入るほどスケールが大きく8000人を収容でき、カントリー歌手やバンドのライヴ、ダンス、バー、ゲームなどを目的に、地元の人々が集った(ちなみにパートナーシップが解消された1986年にクローズ)。
訪れる人々の多くは地元の石油科学産業で働くブルーカラーの男たちとその連れの女たち。ヒューストンの近代的な高層ビルで働くホワイトカラーに比べて経済格差は一目瞭然だが、体臭と汗と色気にまみれたカウボーイ精神と男気は絵になった(それにしても今の日本の郊外/地方都市の風景に近いことに驚く)。
『アーバン・カウボーイ』(Urban Cowboy/1980) はこの巨大なホンキートンク・クラブ「ギリーズ」を舞台に、男女の関係を通じて「都会のカウボーイ」「現代のカウボーイ」精神を描いたヒット作。
主演はジョン・トラボルタ。ショービジネス界の帝王ロバート・スティグウッドと3本の映画契約を結び、『サタデー・ナイト・フィーバー』『グリース』などでトップスターとなっていた彼は、この役を同時期のスターであるリチャード・ギアと争って勝ち取った。
ストーリーは、田舎町から仕事を求めて伯父を頼りにパサデナにやってきた青年バド(ジョン・トラボルタ)が、昼はヘルメットをかぶって工場で労働し、夜はカウボーイ・ハットを装い「ギリーズ」に繰り出す姿を追う。
バドはそこでシシー(デブラ・ウィンガー)と出逢い、恋に落ちる。男勝りなシシーの言動はバドを困惑させることもあったが、二人は友人たちに祝福されてゴールイン。ローンで購入したトレーラーハウスを新居に新婚生活が始まった。
「ギリーズ」にロデオマシーンが投入され、男と女たちの熱い眼差しが集まる。仮出所中のウェス(スコット・グレン)はロデオの名手。ウェスがシシーに色目を使ったことからバドと殴り合いになるが、シシーはバドを驚かせようとしてウェスの手ほどきを受けながらロデオマシーンの練習を密かに行うのだった。
工場の高い足場からあわや転落死寸前の事故に遭遇したバドは、さらにウェスの嫌がらせでロデオマシーンで腕を骨折。シシーとの喧嘩も絶えず投げやりになった夜、たまたま声を掛けた女パム(マドリン・スミス)と一夜を共にしてしまう。
実業家の娘でヒューストンの高層マンションに住むパムは、自分とは境遇の違うカウボーイの男に興味があり、その幻想をバドに求める。家を飛び出したシシーはウェスのトレーラーで暮らし始める。その頃「ギリーズ」ではロデオコンテストの開催が決定。優勝者には5000ドルの賞金が贈られることから、バドもウェスもエントリーすることになった。
ロデオの元チャンピオンの伯父から、仕事終わりにロデオの基本を学んでいくバド。ウェスの激しい暴力を受けながら悲しみに暮れるシシーは、バドへの愛情を手紙を残すが、パムが偶然それを見つけてしまい、届くことはない。
そんなことを知らないバドは猛練習。伯父はシシーとの関係に苦悩するバドにこう言う。「カウボーイだって時には自分から折れて愛する女を引き止めることが必要だ」。伯父はその夜、落雷事故に巻き込まれて息を引き取った。
大会当日。ウェスは賞金を手にしてメキシコへ逃げることを目論んでおり、シシーを強引に同行させるつもりでいる。対してバドはシシーへの想いが日増しに募るばかりで断ち切れない。パムはそんな彼を黙って見守るだけ。果てして男と女たちの決着は?
『アーバン・カウボーイ』を語る時、大ヒットしたサウンドトラックは欠かせない。全18曲の中にはミッキー・ギリー、ジミー・バフェット、ダン・フォーゲルバーグ、ボブ・シーガー&ザ・シルバー・ブレット・バンド、イーグルス、アン・マーレー、チャーリー・ダニエルズ・バンド、ケニー・ロジャース、リンダ・ロンシュタット、J.D.サウザーらが並ぶ。
意外なのは、パムの高層マンションで流れるボズ・スギャッグスのナンバー。カントリー/カントリーロックがラインナップされる中で、唯一都会的な風景を漂わせる。また、「ギリーズ」のライヴシーンではボニー・レイットが登場していることにも注目。サントラには未収録だが、劇中で流れるウィリー・ネルソンとウェイロン・ジェニングスのアウトローナンバー「Mammas Don’t Let Your Babies Grow Up to Be Cowboys」も泣ける。
映画の主題歌とも言えるジョニー・リーの「Lookin’ for Love」を聴いていると、何だかいろんなことを思い出して切なくなった。男にはこんな経験の一つや二つ、きっとあるはずだ。
予告編



『アーバン・カウボーイ』

『アーバン・カウボーイ』

*日本公開時チラシ


*参考・引用/『アーバン・カウボーイ』パンフレット
*このコラムは2019年11月に公開されました。
評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
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