ファイト!〜中島みゆき流の応援歌を読み解けば、理不尽だらけの世の中や歪(いびつ)な村社会が見えてくる

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あたし中卒やからね 仕事をもらわれへんのやと書いた
女の子の手紙の文字は とがりながらふるえている
ガキのくせにと頬を打たれ 少年たちの眼が年をとる
悔しさを握りしめすぎた こぶしの中 爪が突き刺さる


中島みゆきの名曲「ファイト!」は、1983年に発表された自身のアルバム『予感』に収録された楽曲で、1994年に住友生命ウィニングライフのCMで起用されたことをきっかけに多くの人が知ることとなった。
同年には、31作目の両A面シングル「空と君のあいだに/ファイト!」としてリリースされている。
その後も、大塚製薬カロリーメイトCMなどでもタイアップ曲となり、女優の満島ひかりが歌うバージョンが話題となる。



「ファイト」という言葉は、日本語では主に「頑張れ!」と応援や鼓舞するような場面で使われることが多いが、「闘え!」といった直接的な意味もある。
この歌詞には、どちらの意味も見事に凝縮され、より具体的なエピソードと共に表現されている。
生きていれば闘う相手・対象に事欠かない。
この歌詞の冒頭で語られているような、学歴を重視する社会。
子供や若者たちの反論を許さない大人の態度。
我々が生きる世の中には、そういった理不尽が其処彼処に溢れている。

あたし中卒やからね 仕事をもらわれへんのやと書いた
女の子の手紙の文字は とがりながらふるえている


聴き手の心を一気に引きつけるこの強烈なフレーズは、中島みゆきのラジオ番組に届いたリスナーからの手紙が元になっているという。
実際に届いた手紙には、こんなことが綴られていた。
私は中学を出てすぐに働いて2年になる17歳の女の子です。
この間、私の勤めている店で、店の人が私のことを「あの子は中卒だから事務は任せられない」と言っているのを聞いてしまいました。
私、悔しかった。
悔しくて、悔しくて、泣きたかった。
「中卒のどこが悪い!」と、言いたかった。
私だって高校行きたかった。
だけど家のこと考えたら、私立に行くなんて言えなかったし…高校に入る自信もなかった。
なのに、こんなふうに言われるなんて酷い。
ごめんなさい。
愚痴を書いてしまって…またお便りします。

(P.N.私だって高校行きたかったさん)
この頃はまだインターネットやSNSもない時代。
一般人が自分の気持ちを誰かに聞いてもらったり、心の叫びを訴えたりするためには、こういったラジオ番組に投稿し、アーティストや司会者に取り上げてもらうという“お便り紹介”が主流だった。
当時、この一通の手紙が中島の心を突き動かした。
「ファイト!」は、この一通の手紙が生みだしたと言っても過言ではないという。
この歌は“どうしようもない理不尽さ”と、世の中という“敵”に打ち負かされそうな少女の姿を歌った楽曲なのだ。
だが、本当の“敵”は世の中ではない。
その“敵”の正体が、次に続く2番で早くも明かされる。

私 本当は目撃したんです 昨日電車の駅 階段で
ころがり落ちた子供と つきとばした女のうす笑い
私 驚いてしまって 助けもせず 叫びもしなかった
ただ 怖くて逃げました 私の敵は私です


生きていれば誰しもが「自分の力ではどうしようもないこと」や「納得のできないこと」を感じる場面に遭遇する。
しかし、そこから現状を変えるために「自分は何かしただろうか?」
また周囲に逆らうのも怖くて「闘う前から諦めてはいなかっただろうか?」
本当の“敵”は、周りの環境を変えようともしないで「見て見ぬふりが上手くなった自分なのだ」ということが歌われている。
そして、このなんともシニカルなサビのフレーズを挟みながら、続く歌詞には様々な理不尽との闘いが綴られてゆく…
この歌の中には“魚”や“水の流れ”“海”のイメージは何度も登場する。
暗く冷たい“水の流れ”、そしてそこを“魚たち”がのぼっていく。
「のぼっていく」というのは当然、水の流れに逆らって泳いでいる姿である。
水の流れ=理不尽な世の中に逆らい、一見美しく見える“魚たち”。
しかし彼らはどうしようもなく傷つき、やせ衰えているという現実。
そのまま傷つき、やせていけば…いつか魚は死んでしまう。
歌詞に登場する“海”とは何か?
本来“海”は川の流れの最も下流(終着点)にあるもの。
“魚たち”は流れに逆らって泳いでいたはずなのに…あいつは“海”になってゆく。
多くの人達が、いつの間にか逆らうことをあきらめ、理不尽な世の中と同化してゆく様を表しているのだろう。
そして…歌詞はこの楽曲の白眉とも言えるセクションへと続いてゆく。

薄情もんが田舎の町に 
あと足で砂ばかけるって言われてさ
出ていくならお前の身内も住めんようにしちゃるって言われてさ


ここのセクションは「ファイト!」の歌詞の中でも特に具体性があるエピソードだ。
なぜ上京すると「薄情者」「あと足で砂をかける」なのか?
逆に言えば、田舎=それまでいた場所に残れば「情がある人」となるのか?
シンプルに読み解けば「育てた恩を忘れやがって!」というとこなのだろう。
上京=巣立ち・転身を真っ向から否定的に捉え“裏切り者”とするような風習は、なにも田舎だけに限ったことではない。
会社や組織、政党やチームの中でもありがちな“村社会”的な考え方である。

出ていくならお前の身内も住めんようにしちゃるって言われてさ


このフレーズこそが、この世の中に(実際に)存在する“理不尽さ”のすべてを表している。
かの隣国からの亡命者・国から逃れる人が絶えない状況にも何となく似ている気がしないでもない。
“村から出ないのは良いこと”つまり“逆らわないほうが身のため”という共通認識があることを意味している。
そして歌詞はクライマックスへと続いてゆく。
主人公の少女の心の叫び、本音、憤り、哀切、微かな希望…すべての感情が最後の数行に集約されているのだ。
 



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