I’ve Got Life!私は生きている!〜伝説の歌手ニーナ・シモンのドキュメンタリー映画&トリビュートアルバムの誕生秘話
「Ain’t Got No…I’ve Got Life」/ニーナ・シモン
私には家がない 靴もない
金もなければ 品もない
土地もなければ 信じるものもない
頼る教会もないし 祈る神もいない
じゃあ、私には何があるの?
私には何があるのか教えて
私はなんで生きてるの?
時代を越えて、人々を惹きつけて止まないニーナ・シモン。
黒人女性としての誇りと尊厳を歌いあげた伝説のシンガーソングライターとして音楽史にその名を刻んだアーティストである。
“ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガー”では第29位に選ばれている。
1933年にアメリカ南部の貧しい黒人家庭のもとに生まれた彼女。
60年代には公民権運動に積極的に参加し、様々なメッセージを込めたシニカルで大胆な楽曲を数多く残した。
2003年に乳ガンで息を引き取るまで力強く生き抜いた人である。享年70だった。
他界から12年後…2015年、そんな彼女の歌手という側面だけではない、真の姿に迫ったドキュメンタリー映画『What Happened, Miss Simone?』が米国の動画配信サービス“Netfilx”にてストリーミング公開された。
ドキュメンタリー『What Happened, Miss Simone?』Official Trailer
映画のタイトルになったこの“What Happened, Miss Simone?”という言葉は、アメリカの活動家であり詩人のマヤ・アンジェロウが書いた記事から引用したものだという。
監督に抜擢されたのは、これまでにも数々のドキュメンタリー映画を手がけたリズ・ガルバスという女性監督だ。
彼女は、ルイジアナ州刑務所の暴走的な日々の様子を囚人の視点から描いた『The Farm: Angola USA』(1988年)や、伝説のチェスプレイヤーのドキュメンタリー『Bobby Fischer Against the World』(2011年)、そして日本でも公開され話題となった『マリリン・モンロー 瞳の中の秘密』(2013年)などで高い評価を受けてきたベテラン監督である。
ほとんどの伝記的なドキュメンタリーは、対象に起きた良い出来事と悪い出来事を年代順に並べ、誰かが対象について褒めたり業績を讃えたりする映像を入れ込んだ“四角四面”の表現で作られていることが多いのだが..