ミスター・タンブリン・マン〜フォークとロックの境界線に橋を架けた名曲

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1965年6月26日、ザ・バーズのデビュー曲「ミスター・タンブリン・マン」がビルボード全米シングルチャートで1位を獲得した。
ボブ・ディランが作詞作曲した歌として広く知られている名曲だ。
数あるディランの楽曲の中で初の首位となった記念すべき作品であり、それまでなかった“フォークロック”という言葉を誕生させるきっかけとなった歌ともいわれている。
この歌は一体どんな背景で生まれヒットに至ったのだろう?
当時は、エレキ楽器を演奏するロックとアコースティックギターでメッセージソングを歌うフォークとの間に“はっきりとした境界線”があったという。 
まだ無名だったバーズが目指したサウンドは“ロックとフォークの融合”だった。
具体的にはビートルズとボブ・ディランの中間を表現しようと模索していたのだ。
ロジャー・マッギン(g,vo)を中心に、クリス・ヒルマン(b,vo)、デヴィッド・クロスビー(g,vo)、ジーン・クラーク(vo,g)らによってザ・バーズが結成されたのは前年(1964年)のこと。
結成のきっかけは、マッギンがビートルズの映画『ビートルズがやってくる!ヤア!ヤア!ヤア!』に影響されてのことという。
彼らはバンドとしての演奏力を高める目的もあってサンセット・ストリップ(ロサンゼルスの主要道路の一つ、サンセット・ブールヴァードのほぼ中心に位置する約2.5キロの区間)のクラブで連日演奏をしていた。
彼らの噂や評判は日に日に広がりをみせ、南部や東部、中西部、カナダで暮らす若者たちを刺激したという。
ある日、そんな彼らのもとに1枚のアセテート盤(デモテープのようなもの)が舞い込んでくる。
それはボブ・ディランと、フォークの大御所ランブリン・ジャック・エリオットが「ミスター・タンブリン・マン」を演奏している幻の録音だった。
ジャック・エリオットと言えば、ディランが敬愛するウッディ・ガスリーと一緒に仕事をしていた名ギタリストだ。
だが、その盤に収録されていた内容は…エリオットが酔っぱらって歌詞を憶えておらず、ディランもレコーディング中に酔っぱらってしまい、ボツになったものがなぜか流出してしまったという“曰く付き”の音源だった。
だが、それを聴いたザ・バーズのメンバーにはひらめくものがあったという。

「これにロックのビートをつけたらかっこよくなるぞ!」


こうして誕生したのがザ・バーズ版の「ミスター・タンブリン・マン」だったという。
その後、ザ・バーズは当時の音楽シーンに様々な影響を与えただけでなく、そこからクロスビー,スティルス&ナッシュといったグループが派生したり、グラム・パーソンズとの出会いの中で“カントリーロック”という新しいジャンルを開拓してゆくこととなる。


ところで、この“ミスター・タンブリン・マン”というタイトルはどこからつけられたのだろう?
ディラン自身の説明によると…これは彼のレコーディングセッションでギターを弾いていたギタリスト、ブルース・ラングホーンがモデルになっているとのこと。
彼は巨大なタンバリンのようなフレームドラム(トルコの楽器)という珍しい楽器を持っていたという。
ディランはその楽器を演奏している彼の姿を見てインスピレーションを受け曲を書いたというのだ。
現代の辞書によると“タンブリン・マン”という言葉は、アメリカのスラングで“ヤク(薬物)の売人”という意味にもなるらしく、その語源はこの曲から来ているという俗説もある。
また『ディラン、風を歌う』(三井徹訳/晶文社)の著者マイケル・グレイはこの歌詞についてこう分析している。

「この歌は詩神に霊感を与えてくれるように祈る歌である。」



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